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月面に着陸した月探査機「SLIM」。着陸直前に放出された小型ロボット「LEV-2」が撮影した(C)JAXA/タカラトミー/ソニーグループ/同志社大学

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は26日、1月に月面着陸した探査機SLIM(スリム)の運用を終了したと発表した。約2週間続く零下170度の極寒の夜を生き延びる「越夜」を3回達成したが、その後、通信を再開できなかった。

 SLIMは誤差100メートル以内の「ピンポイント着陸」に世界で初めて成功。搭載した特殊なカメラを使い、当初の想定を超える10個の岩石の組成を調べた。地下のマントル由来の鉱物を観測し、月の起源の解明につながる手がかりを得た。

 当初は着陸から数日で運用を終える予定で、越夜を想定した設計ではなかった。にもかかわらず、2月、3月、4月の3回にわたって越夜に成功したことも注目を集めた。

 ただ、5月以降も通信を試みたが、応答はなく、今月23日に活動を停止させる信号を送った。大半の機器が設計で想定した期間を超えており、壊れた可能性があるという。

 JAXAは、SLIMによる月面探査で得られた成果をとりまとめ、今秋にも発表する予定だ。

 プロジェクトチームはX(旧ツイッター)で、「SLIMは多くの新たな知見を我々にもたらしてくれました。打ち上げた当時はまさかここまで運用が続くとは誰も想像していませんでした。これまでSLIMを応援いただきましてありがとうございました」と投稿した。(佐々木凌)

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